答案用紙盗難事件~タロット蛍子~/◆木曜日◆

小説

「準備OKよ。でも、本当に大丈夫なの」
吉野が生徒会室に駆け込むなり、そういった。作戦を聞いた時は、ずいぶん無茶だと思ったが、本当に上手くいくのだろうか。
「大丈夫よ、明日の夜には片がつくはずよ」
蛍子は自信たっぷりに言い切った。
吉野の仕事は、噂を流すこと。生徒会の情報を吉野が知っていても、怪しまれない。
後は三杉も声高に、このことを触れ回ってくれているだろう。
吉野たちが広めている噂はこうだ。
すなわち新たなテスト問題が作成され、それはハワイに行っている三竹先生から送られてきたものだ。ということ。
そしてその問題用紙は、職員室ではなく生徒会室に保管されるのだということを。
だが、本当に上手くいくのだろうか。もしまた盗まれてしまったら。
「本当にいいんですか。三竹先生が作ったことまでばらして」
蛍子の横に座っている三杉に尋ねる。
「いいのよ、恩田先生が作ったって、誤解させておくほうが、盗みに来ないかもしれないでしょ」
それじゃあ、困るのよ。という。
「それはそうですけど。せっかく三竹先生に頼んだんですし、このままテストまで問題を隠してたほうが」
吉野が戸惑いながら言うと、
「でもそうしたら、犯人は二度とつかまらないわ」
「それはそうですけど」
犯人がつかまらなくとも、彼または彼女が元の成績。実力でテストを受けたら充分ではないか。
「そうしたら、ケーコちゃんの汚名が晴れないでしょ」
吉野の考えを読んで、冷静な声音で三杉が指摘する。
「そうですね。忘れてました」
はっと、吉野が気付く。
「とにかくテスト問題が再び盗まれることはないわよ。絶対」
自信有りげに応える三杉を、信用することにして吉野は黙った。

◆金曜日◆ 1 へ続く)